ドコドコドコドコ ドコドコドコドコ。
心臓が16ビートで打ち続ける。
はあはあ はあはあ
呼吸が戻らない。
(ダメだ。目がチカチカする。)
7月2日、滋賀県の金勝アルプスの稜線上である。
岩ばかりで日陰がない。
朝の天気予報でお天気お姉さんが35℃を予想し笑顔でいってらっしゃいと言っていたのを思い出していた。
ボタボタと鼻先と顎から汗が落ちる。
水を飲む。さっきから何度も飲んでいる。
それでも体が水を欲しがる。
乾きではない。
おそらく体温だ。体温が異常に上がっているせいだ。
座ったら汗でお尻の跡がつく。全身滝汗でビショビショだ。
今、自分の体温は何℃あるのだろう?
平熱より1℃高い37.5℃が登山では最も行動パフォーマンスが上がるコンディションだそうだ。
(この体調は37.5℃を遥かにオーバーしているぞ。体を冷やさなければ。)
下を見て歩く。顔を上げると立ち眩みがするからだ。
そんな中、何とか木陰を見つけ転がり込む。
はあはあ はあはあ。
少しだが風を感じる。
来ていたシャツ、インナーを脱ぎ、枝に干して日よけをつくる。
バハーッと寝転がった。
(よし。もう大丈夫だ。)
落ち着いていく呼吸に安堵しながら考えていた。
(私はいったい何をしているんだろう)
この日はある花を探しに来た。
カキランだ。
昨年、この場所で教えてもらった黄色い小さな花。
小さい花に興味を持つきっかけとなった花で、カメラに自信のついた今、この花を撮ってみたくなり、ここにやってきた。
昨年は中腹の水場に咲いていた。そこへ行けばあるだろうと甘く考えていた。
ところがカキランがないのである。
あれ~あれ~と探しまわって一つ山を通過し、二つ目の山頂近くまで来ていたのである。
体力が回復してきて冷静に考えられるようになってきた。
(もう水が100m㍑しか残っていない。下りよう。)
エスケープルートで川沿いに下り、涼しいルートを選んで歩いた。
沢まで下りザブンと川に浸かる。足を伸ばし座ったまま10分経過。
血液が冷え、体が元気を取り戻した。
回復するまではこんな美しい水場だったことにも気が付かなかった。
ルリルリっとした水がキレイ。
夏の昼間の低山はやばいです。
私は冬山より危険だと思います。
そしてこの花がカキラン。
次週の7月9日に再挑戦し、ついに見つけてきた写真だ。
こんなことがあって更に好きになってしまった。