波多です。
二上山にはたくさんの花が咲く。
日本【花の百名山】の一つだ。
この二上山の5月~6月に咲く花で、その美しさで有名な花がある。
ササユリである。
花に興味がない登山者も見かけると足をとめて見入ってしまうほどだ。
緑の草むらに首を伸ばし、スッと咲く白い姿は色白美人が佇むようである。
私がもっとも好きなのはその横顔だ。
気品漂うその姿に見とれてしまう。
横を通り過ぎる際は「失礼します。お邪魔しております。」と一礼してしまうのだ。
美しい立ち姿だけではなく、通り過ぎる時に花が放つ芳香に振り返えってしまうのである。
容姿と香りで登山者を魅了する女王様のような存在感だ。
登山を始めて3年。
花に興味がない時からこの花には敬意を表してきた。
6月18日のことだった。
今年もササユリさまに会いに二上山へ向かったのである。
万葉の森からスタートし、鹿谷寺跡に着く。
ここにもササユリが咲くのだが今年はもう散ってしまったようだ。
歩みを山頂に向けて進める。
腰の調子は万全ではない。登りが急坂になると痛みが出る。
途中の休憩ポイントで休んだ。
梅雨に入ったばかりだが、外気温34℃の日であった。
既に滝汗をかいている。足腰の痛みで以前のように登れない。
たった1か月でこんなに登れなくなるとは・・。こんな低い場所で休憩するなんて。
情けなさに心が折れそうになる。
引き返そうかとも思ったが足をバシバシと叩き、足腰を励まして再出発する。
腰への負担を考えてなるべく緩やかな斜面を歩くことにした。
普段は使わない回り道をいこう。日当たりは悪いが緩い道に進路をとった。
汗は引き、気持ちの落ち着きも取り戻していた。
その時である。
暗がりの中、鮮やかに目に飛び込んできたものがあった。
ヤマアジサイである。
この写真はその時出会った瞬間を撮ったものである。
ズームや構図など気にせず、私の目線を残した。
ものすごくキレイだと思った。
暗がりで突然に現れたからビックリしたのもあった。
そこだけ日が射していたから印象的に映ったのかも知れない。
とにかく私はとても美しいものに出会ってしまったと感じた。
なんて繊細なのだろう。
今まで気にしたことがなかった花、ヤマアジサイ。
昆虫から見たらこんな感じにみえるのだろうか。
昆虫目線でも美しい。
突然出会ったヤマアジサイに夢中であった。
陽が当たるのを待ったり、風で揺れが止まるのを待ったり。
画像データには200枚もの写真が残った。
「ちょっとすみません。」
後ろから声がかかり邪魔になっていることに気が付いた。
狭い登山道である。カメラに夢中で周りが見えていなかったようだ。
「あっ、すみません。」
道を開けた。私もササユリを目指して山頂方面に向かうことにした。
ササユリまで歩く道中に何度かアジサイを見つけた。
その度、小走りで駆け寄ってしまう。
腰の痛みも忘れていた。
そして何でか知らんがメチャクチャ上手いこと撮れてしまう。
白いアジサイ。柔らかな色調はそそままブーケに出来そうだ。
しばらく歩いていると人が集まっているのが見えた。
ササユリだ。
女王様は何人たりとも素通りを許さない。
私もほどなくしてササユリさまの元へ到着。
ひざまずき同じ高さからご挨拶をする。
(1年振りで失礼します。堺市から来ました波多と申しまして、二上山には春夏秋冬お邪魔させていただいております。貴方さまがお目覚めだとの噂を聞き、本日は馳せ参じた次第です。相変わらずお美しゅうございます。)
(ひとつ白状することがあります。ササユリ様すみません。今日は貴方を撮りに来ましたが、途中に出会ったアジサイばかり撮ってしまいました。バッテリーの残りはわずかで数枚だけの撮影になります。)
グルグルとササユリの周りを歩きベストな立ち位置を探す。
あっち向きとこっち向きのこの角度が良さそうだ。
渾身の1枚をパシャ。
下山途中にもう一度アジサイのところに向かった。
この花にはササユリとは違った美しさがある。
アナと雪の女王に例えるとエルザがササユリ、アナがアジサイといったところか。
私はアナに会いたくなるようだ。
ササユリを撮ったのは4枚。
アジサイは200枚を超えていた。
私はササユリよりアジサイの方が好きなのかも知れない。
二上山は確かに花の百名山だった。
花に魅了された山行であった。