無限の星空、無限の旅路:5月3日のことだった



53日のことだった。

月齢が若く月明かりがない。

前日が雨で当日の夜から晴れ予報。

 

この情報から星空撮影に挑戦することにした。

向かった先は大台ヶ原。

ここは奈良県と三重県の境界で尾鷲市の近くにある。

堺から車で約3時間である。

この大台ヶ原は何度も行っており、ここの良いところは熟知している。

星空の他にも撮影したい場所があった。

朝方は正木峠と日出が岳、昼間は西大台ヶ原保護地区の森であった。

 

いつものようにコーヒーの準備をし、23時に家を出た。

遠いが慣れた道である。苦もない。

やがて大台ヶ原ドライブウェイに入る。ここから先は目的地まで

美しい道になっている。夜中だがハイビームにして左右の林の

景観を楽しみながら車を走らせた。

 

大台ヶ原駐車場についた。午前130分だった。

分かっていたが寒い。おまけに暴風だ。

が、心が躍り、気がはやった。

着いた瞬間から降り落ちてくるような星空であったからである。

出る前にセッティングしたカメラを持って夜の山に歩き入った。

このカメラはGW前にお借りしたもので広角レンズがついている優れものである。

慣れないカメラの星空用設定を現場でしていては手間取るであろうと、出る前に

設定と準備をしておいた。抜かりはない。

 

山道を1時間ほど歩いた。

暗闇でも怖くない。クマのことも気にならない。

目的を持っている時、人は強くなるというものだ。

歩きながら見上げると銀河がある。過去一の星空だった。

これからこの星空を撮ると思うとワクワクで速足になった。

 

目的地に到着した。

日出が岳頂上手前50m地点である。撮影は山頂小屋と天の川が

同時に画面に入るこの場所だと決めていた。

まず三脚をセットする。

雲台にカメラを取り付ける。

いよいよモニターを見て撮影開始だ。

とりあえず試しにシャッターを押す。

が反応が悪い。

アレっ?もう一回。

やはり反応がない。

カメラを見ると画面に赤い文字が点滅していた。

(バッテリーを交換してください)

 

駐車場へ引き返す道は長かった。

歩きながら考えていた。何が悪かったのか?

堺でカメラ設定してからずーっと電源付けっぱなしになっていた可能性がある。

はじめてのカメラ機種で取り扱いが分からん部分もあった。

設定にも手間取り、時間がかかった。

でもその時には満タンだったのに・・・。

 

ハプニングは起こる。

こんな時は気持ちを波立たせてはいけない。

気持ちを落ち着かせセカンドプランにすぐ移行するのだ。

念のため自前のカメラも車に積んである。

星空撮影は駐車場でやることにした。

 

マニュアルフォーカス設定→Mモード→F値最大→25秒スローシャッター

→シャッター後2秒後撮影→ISO感度3600

事前に設定した経験が生きる。

要はあらゆる手段を使って光をカメラ内に届ける設定だ。

ピント合わせには苦労したが写真に天の川が写った。

嬉しかった。

微調整しながら10枚ほど撮った。

調整するたび上手く撮れる。

楽しくて夢中であった。

 

撮影後、再び山頂を目指し山に入った。

正木峠の朝は特別だからだ。

正木峠。

日が上る前のこの時間が好きだ。

熊野灘の海岸線が徐々に姿をあらわしてくる。

コーヒーを淹れ極上のひとり時間を過ごす。

日出が岳山頂の頂上小屋。

空のグラデーションが素晴らしく、画面が黒つぶれしても

露出を上げず、空色を撮った。

バッテリー切れがあった現場。

頂上小屋50m地点。

この画角で天の川を入れて星空撮影する予定だった。

日出が岳山頂より。

遥かなる山並みが続く。気候が良い日には富士山まで視界が届く。

朝日が出た。振り返りの大峰山系がモルゲンロートで

赤く浮かび上がる。

 

この時間になると多くの登山者が上ってくる。

「おはようございます。」

出会う人との声かけ。

根底に(あなたも私も山が好きですよね)という好意があっての言葉。

(ご安全に。)

心の中ですれ違いざまに思う。

 

 

その後、駐車場に戻り9時まで待機。

9時から15分ほど自然保護のレクチャーを受け、西大台自然保護地区へ。

4時間かけてゆっくり森の自然と生き物を見て回った。

たくさん写真を撮ったがこの一枚だけにしておこう。

パタパタと葉っぱを羽ばたかせ飛んでいきそうに見えたコミヤマカタバミ。

 

 

ここ大台ヶ原は車で山頂まで上がれて登山が不要です。

山頂での絶景ハイキングが楽しめるおススメの山。

大蛇グラでは落差1000mの断崖でスリルを楽しめ、

正木ヶ原では立ち枯れた幻想的な林を歩けます。

丘を越えるごとに素晴らしい景観が現れる日本の100名山の一つです。

 

どなたにも友人とおしゃべりしながら歩いてみて欲しいです。